終.

 空木の君は、その後、一月ほど生きていた。体にも心にも無理を重ねたことが、寿命を縮めたのかもしれない。しかし、その死に顔は穏やかだったという。

 弓月の国はその後暫くの間国情を不安定にしたが、やがて国長の灯月の君の元で順調に回復した。
暁姫は、これより五年ほど後、暁月の君と名を改め、女人としては初めて、この国の国長となった。特例中の特例であったが、後継の不在により認められ、彼女の治世においても国が乱れることは無かった。弓月の国は、これ以後、八百年の間国の名をとどめ、その後、隣国との戦の中で、併合されていくこととなる。
 暁月の君の夫についての記録は残っていないが、その後の弓月の血は彼女から出たものであることは確かであり、彼女の治世から百五十年後、白月という名の人物が、国長となった。
 建国以来の名君と謳われたこの人物は、記録に拠れば白子、この国の言葉で言えば、月人であったとされている。

〈 了 〉


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